この記事を読んで欲しい人
- 医療現場の生の声を聞きたい人
- 今まさにコロナと闘っている医療関係の仲間達
- これから理学療法士を志す人
この記事を読むと起こる良いこと
- 入院病棟の現在(特にリハビリテーションからの視点)を知れます。
- 実際、一人の理学療法士としてコロナに直面して気付いたことを読むことができます。

※センシティブな話題ですので、まずは以下の点をご参照下さい。
- あくまで筆者の個人的な視点・意見です。
- 病院や病棟、地域により状況は変化します。
- 全ての人や環境に当てはまるとは限りませんので、ご了承いただけますと幸いです。
- 万が一、不快な表現がありましたら本当にごめんなさい。
医療現場で起こっていること

現在、世界中に蔓延している感染症、新型コロナウイルス感染症。
医療現場では、感染リスク予防に限らず、多くの場面で変化が生じています。
実際、現場では何が起きているのでしょうか。
今回は筆者が勤務する入院病棟を例に、
新型コロナの影響で変化した入院リハビリテーションについてご紹介いたします。
スタッフ視点での変化
まずは私が働いている医療現場にもたらされた影響について、
スタッフの視点で見ていきましょう。
感染対策の徹底

新型コロナウイルスの蔓延を防ぐためには、
適切な感染予防対策を行うことが最も重要となります。
コロナ禍以前より、インフルエンザやノロウイルスが流行しやすい冬季は特に集団感染のリスクが高いため、スタッフの手指消毒や治療器具の消毒を心がけていました。
新型コロナウイルス発生後は、季節にかかわらず最大の注意を払うようになりました。
元々ベースで気を付けていた部分に加え、さらにプレッシャーがかかるような・・・そんなイメージです。
ちょっとした油断がクラスターに繋がってしまう可能性があるためです。
後でもお伝えしますが、これはスタッフだけの努力ではありません。
恐ろしい院内感染を予防するためには、
患者さんやご家族にも協力をお願いすることも重要となります。
圧倒的な人手不足

多くのテレビ番組やネットのニュースで取り上げられている通りですが、
医療・介護従事者の人手不足が顕著になってきています。
患者数の増加も大きな要因と言えますが、
仕事に対する身体的・精神的疲労やストレスから、
日に日に医療スタッフが減っている?
というよりも足りなくなっている?ように思います。

退職まではいかずとも、
体調不良で欠勤するスタッフ分の業務を周りが補填して、
補填してくれたスタッフの誰かが疲弊し欠勤して、
職場全体が疲弊して・・・
だからといって増員は難しい、なんていう悪循環に陥っています。
ちょっとした風邪症状でも出勤停止となったり、検査結果によっては担当した患者さんや関わったスタッフが濃厚接触者となることもあります。
これからはワクチン接種対応に出るスタッフも必要となるでしょう。
感染対策の徹底から生まれる皺寄せと、逃げ場のない労働環境。
実際に涙を流している看護師さんを目にして無力感を感じたこともあります。
同じ医療従事者ではありますが、私達リハビリスタッフには患者さんへの注射や傷口のケア、夜間の対応はできません。
他にも数えきれないくらい看護師さんにしかできない仕事があります。
看護師さんや他職種のスタッフの方が一生懸命支えてくれているからこそのリハビリテーションです。
リハビリはリハビリ職だけで完結できません。
共に闘ってくれている医療スタッフの仲間に感謝の気持ちを持って、
リハビリ職として力になれることを少しでも探していきます!
緊張感とプレッシャーの増大

現在、院内に入られる患者さん、ご家族、スタッフの
体温測定は必ずと言って良いほど実施するようになっています。
発熱している患者さんが他の患者さんとの接触を防ぐために病室、リハ環境の選択や消毒など配慮するようにもなりました。
感染力の強い新型コロナウイルスは一人感染者が出ただけで院内クラスターに繋がりかねないからです。
特に入院病棟では様々な疾患を抱えた患者さんが入院されています。
ただでさえメインの病気と闘っているタイミングで新型コロナに感染した場合、命を落としてしまう危険性も十分に考えられます。
大きな責任が伴う分、医療現場ではプレッシャーにより雰囲気もピリピリするようになりました。
患者さん視点での変化

新型コロナウイルスの影響を
最も強く受けているのは患者さんであると思います。
今度は患者さんの視点で見ていきましょう。
手指消毒による皮膚症状の出現

医療スタッフにも言えることですがこれは患者さんにも言えることです。
写真のようにあかぎれとまではいかずとも、
乾燥による痒みや粉ふきが出現することがあります。
リハビリ前後での手洗いやアルコールジェルによる消毒など、スタッフから促される場面も多くなってきたことも、これらの要因として挙げられます。
皮膚症状悪化に伴い、二次的な感染リスクも考えられるため、
この記事を読んでくださったスタッフの方も一緒に注意していきましょう^^
そして、いつも手をしっかり洗ってくださる患者さん!
本当にありがとうございます^^
皆様の協力のおかげで院内の安全が保たれています!
思った以上にマスクって苦しい

この記事を読んでくださったあなたは、
マスクをつけたまま走ったり、階段を上がったりしたことはありますか?
全身が弱っているリハビリ中の患者さんは
健康な人とは異なり、
『歩く』とか『立つ』だけでも息切れしてしまうことが多いです。
リハビリ中、「苦しいなあ。これ付けていると疲れるんだよな~。」とマスクをつまみ苦笑いされている患者さんと休憩する場面も増えたように思います。
コロナ禍前までは”「もう少しいけそう」な負荷”でも、
現在では”「このへんでおさえておこう」な負荷”になることが多々あります。
マスクは飛沫から守ってくれるという最大のメリットがありますが、
その代償として呼吸がしづらくなるというデメリットも持ち合わせています。
加えて、適切なタイミングでのバイタルサイン測定など、
細かなモニタリングを必要とする場面が増えました。
リハビリテーションを行う立場としては、
マスク装着による呼吸や疲労への影響も考慮した上で
運動の負荷や練習内容、休憩時間を慎重に検討しなければなりません。
レクリエーションや自主トレーニングの制限
新型コロナウイルス流行前までは、
- レクリエーション:病院内や施設内で人が集まり、体操やゲームなどをする機会
- 自主トレーニング:リハビリ時間以外にリハビリ室でのマシントレーニングに勤しむなどの機会
が多くありました。
人が密集するような環境を病院側で作らないために、これらの機会が減ったのではないかと思います。
ですが、ただ減らして終わりではなく、
- 集団ではなくマンツーマン、少人数にする
- 広いスペースに変更する
- 人と人の間隔を空ける
- 混雑しないよう時間を分ける
- など、どのような対応をすれば
- どうにかこの機会を維持・再開できるか模索している最中でもあります。
屋外(不整地)歩行練習の制限
退院後の生活に備える上で、
屋外の歩行が必要な患者さんは屋外歩行練習を行う必要があります。
しかし、専門のスタッフによる感染対策下の院内と比較して、院外は感染対策が不十分な人や自覚症状の無いコロナ陽性者の人が歩いているかもしれません。
そのような人と患者さんが近づく機会を屋外歩行練習で作ってしまったら・・・
検査結果を見ない限りは
「この人は感染しているな。していないな。」と判断することは出来ません。
そのため、病院によっては
- 実施環境や時間を変更する
- 頻度を減らす
- そもそも中止する
などの対応を取らざるを得なくなっていることが現状です。
現在の代替手段としては、
- 院内の敷地内(駐車場等)を歩行する練習を行う。
- 物品(踏み台や材質の異なる床面、コーン)を使用し、意図的に不整地を作る。
など試行錯誤しながら、工夫して練習を進めています!
外出・外泊の制限

上の『屋外歩行練習の制限』と同様の内容になりますが、
外出・外泊にも制限が生じるようになりました。
新型コロナ流行以前は
休日やGW、年末年始など
入院中の患者さんが息抜きにご家族と外出されたり、ご自宅で数日間過ごされたりされることが多くありました。
今は院外での活動の制限をお願いさせていただいてますが、
早くコロナが収束して、リフレッシュされた患者さんの晴れやかな笑顔が見れることを願っています。それまで頑張るぞ!
やる気をキープすることが難しくなった

何かを乗り越えなければならない時、
あなたは何が必要だと思いますか?
時間、体力、お金・・・どれも大事と思います。
メンタル面に関しては、やはり、
やる気やモチベーションが重要となってきますよね。
病院の患者さんも同じように、病気の治療をしたり、リハビリを頑張るための原動力が必要です。
「病は気から」という言葉もあるように、
患者さん本人のやる気やモチベーション次第で治療効果は大きく変化してきます。
モチベーション向上の大きな要因となるのが、家族や友人など、周りからの言葉、応援です。
実際にこんな検証もされているそうです。
応援されることで選手の運動量が約20%アップ! 日本で初めて、観戦により選手の身体機能が向上することが証明される
- 無観客の前半戦と、観客を入れて応援されている状態での後半戦で、選手のパフォーマンスに違いがあらわれるのかを、選手達に活動計測デバイス「Knows」を着用してもらい、計測しました。
- 測定数値としても、観戦による選手のパフォーマンスの向上が証明されました。
- 見られたこと・応援されたことにより、心拍が高い疲れている状況でも頑張れていたことが分かりました。
面会を積極的に行えない今、
ご家族から患者さん本人へ直接的な応援、叱咤激励が難しくなってきております。
その分、長い入院生活やリハビリへのやる気を保つことが辛い環境となっています。
今、入院患者さんに直接顔を合わせてお声掛けできるのは医療スタッフだけだと思うんです。
・・・そこで私は覚悟を決めました!
ポジティブな声掛けを行うことで、患者さんのモチベーションをキープ、どころか爆上げできるセラピストになると!
・・・茶番は置いといて。笑
院内・退院先でコロナ陽性患者が出ると・・・

入退院のタイミングにも影響が生じています。
病院や施設へ移る際、新型コロナウイルスの感染力が無いか、慎重に判断しなければなりません。
そのため、無症状の場合でもPCR検査での結果確認後に入退院の判断を行うケースが増加しています。
次行く施設でクラスターが発生している場合は入院期間を延長するなどの対応をとらざるを得なくなります。
常にクラスターのリスクと隣り合わせの医療機関や施設では、
患者さんの健康を第一優先しての判断を行っています。
そのため、上のような苦渋の決断をしなければならなくなるケースも現実として増えてきています。
おさらい

今回はコロナ禍、医療現場で起こっていることを
- 現場スタッフ視点
- 患者さん視点
に分けてお伝えしました。
はいっ!
今回のオトクトレーニングはここまで!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました^^